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貴州省徳江の儺堂戯

 

数民族自身が持っている文化の可能性もありますが、漢字を使った文化、それから道教の影響が強くて少数民族だけで作れるものではありません。中国の道教のお祭りを七〇パーセントは根底に持っているのです。ですから少数民族が持っている仮面劇が中国の仮面劇のルーツだと思えない。逆にしか考えられない。しかも少数民族の儺堂戯は村全体で行う祭りではないのです。大抵大金持ちの一軒が道士を雇って行うもので、村祭りの色彩が少ないのです。これは古い社会の祭祀を引き継いでいるように思えないです。むしろ少数民族の支配者が自分の支配を権威づけるため、文化の高い中国民族の儀礼を取り入れて自分の文化が高いことを示したのではないか。日本の平安朝の貴族たちと同じで、中国のものをやたらと輸入して都の制度を習ったり整えたりした。何のためにやったかというと、自分たちは文化がある。自分たちは力がある。庶民よりも上だということを示すためです。武力ではなく文化で庶民を威嚇するものです。そういう性格を持っているものだと思います。儺堂戯は確かに泥臭いし、それだけで説明しきれないかもしれない。少数民族固有のものがあるし、中国民族ではなくなったものもあるわけだから。儺堂の仮面だってすべて中国起源のものとは限りません。従って仮面劇のルーツが少数民族にあるという推理をしたくなるのは無理はないけども、中国の長い歴史からみるとそう簡単にいかない。
江西省の安順とか安徽省の貴地県では儺戯は村全体の農民がやっている。特に技術を持っている人がやっているわけではない。ところが貴州や湖南の少数民族の場合、僧侶とか道上のように特定の宗教司祭者がやっています。宗教儀礼の一種なのです。お金持ちがお金を出してやる祭ですが、村人のほとんどが好奇心で見に来ます。しかしそれは季節祭りでもなんでもない。本来の追儺は鬼を追い払うために春に行う季節祭りですから、村人全

 

 

 

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